第25回ピンポイント絵本コンペ結果発表

25回ピンポイント絵本コンペ結果発表

審査員: 榎一憲/高橋雅之/山縣彩/西須由紀

今年度の応募総数は265作品でした。今回から選考方法が変わり、4名の審査員それぞれが数日間掛けて全ての応募作品を予審した上で、選考最終日には全審査員が一同に会し、1次から3次までの選考を行い、最終的に受賞作品6点を決定しました。各審査の過程で、265作品それぞれの作品の持っている良さ、足りない点、それに加え作品の可能性について議論を重ねたので、長丁場となりましたが、各審査員の評価基準が明確に表れ、反映された結果になりました。下部に掲載した審査員のコメントも参考にしてください。

受賞展は7月1日月曜日から3週間に渡り開催予定です。ぜひご高覧ください

第25回ピンポイント絵本コンペ受賞展 2024年7月1日(月)~7月22日(土)

12:00~19:00  初日は14:00~19:00 休廊日 7(日)、13(土)、14(日)、15(月) 展覧会詳細はこちら

最優秀賞 1名
『のらねこノラ』  すげいずみ
優秀賞 2名
『キツネとフライパン』 風 信子
『まんまるおつきさま』 かとうたかこ
入選 3名
『ゆきのよるのアイスクリーム』 久保田寛子
『うんのいいねこ/うんのわるいねこ』 ホリべクミコ
『ちくわくんとマカロニぼうや』 こうじまいちお

第3次選考通過者までの発表はこちらから

 

審査員講評

(審査員、榎一憲、高橋雅之、山縣彩、西須由紀)

 

【榎一憲】 歴史ある絵本コンペの審査に、プレッシャーを感じながらの3年。思いの込められた作品の数々に目を通し、改めて絵本とは何かを考える得難い機会になりました。今回も応募総数265の激戦。最終審査では、一点一点、審査員の視点をぶつけ合いながら検討しました。入賞された皆様おめでとうございます。いずれも作者の人となりが感じられる、独創性のある作品ばかりです。さらに、魅力がしっかり伝わるように、ダミーがきちんと仕上げられていたことも評価されています。惜しくも入賞できなかった作品は、そこがもう一歩足りなかった。自分だからこそできた絵本と言えるかどうかが大事だと思います。どこか既視感があったり、ダミーに仕上げの余地を残していたりすると、評価されなくなることがあります。今回は、ブラッシュアップされた過去の応募作品も多かったです。足りなかった一歩を詰めて進化した作品の再登場も期待していると申し上げ、審査最終年の言葉を結びます。

【高橋雅之】「絵本のデザイナーの視点」での審査の2年目です。デザイナーである前に本好き、絵本好きという自分がいるので、気持ちをまっさらにして、応募作品に向き合う事にしています。沢山の作品を一冊ずつ手にとって、表紙を見て、ページをめくっていきますが、いい作品は「イントロ」に魅力があるかどうかで、かなり決まると感じました。その世界に引き込み、ページをめくらせる力を持った導入部であること。その力とは、絵と世界観のオリジナリティ。表紙から「どこかで見たことのある絵」では、その時点で魅力のないものになってしまいます。完成度はまだまだだとしても「この世界を表現したい」という強い気持ちが、オリジナリティを生んで、読者の心を動かすのだと思います。絵本は自由な表現媒体、型破りな作品にも期待します。選外でしたが私が「絵」に魅力を感じた作者名を記します。隅田信城、fuyu、そらのねい、本塚麻美、ハマダミワ、あきほしゅんたろう、こてらくみこ、zouinn、むらよしみ、斉藤みお

【山縣彩】『のらねこノラ』は、キャラクターの身体まるごとで生き生きと表現される描写が魅力的。色彩感覚と画面構成力が際立っていました。お話も含め全体のクオリティが高く最優秀賞へと辿り着きました。表紙もよかった(大事です)。『キツネとフライパン』は味わいのある水彩画と古き良き童話のような文体、愉快な設定で独自の世界を描きだしました。『まんまるおつきさま』は丁寧な筆致で描かれた月や太陽の喜怒哀楽の表情が豊かで実に愛らしく、見る者を引き込む力を感じます。『ゆきのよるのアイスクリーム』には、絵にも言葉にも不思議なムードと間合いがあり、なんとも言えない色使いも秀逸。『うんのいいねこ/うんのわるいねこ』は精緻でデザインセンスに優れており、美しく手製本された手にとりたくなる一冊でした。『ちくわくんとマカロニぼうや』は荒削りではあるものの、裸足の子どものようなパワーとユーモアを持っていました。飛び抜けた作品がなかった回ともいえ、絵が上手く体裁が整っているだけでは足りない何かが、絵本に魂を吹き込むのだと改めて感じます。思いがけない発想や風景を人に届ける形へと粘り強く作りこむ、そんな作品を待っています。

【西須由紀】今回ひときわ目立ったことは、登場人(動)物にタコが多くでてきたこと。猫や犬、クマ、ウサギは絵本の定番だが、こんなに沢山タコをみるのは初。タコのもつ姿形が個性的な絵本表現に向いているし、ドラマチックなストーリーを生みやすい。笑いを得ることもあるだろう。ライバルが多いなかで、群を抜く作品になるには、キャラクターに頼りすぎず、思い切りのよい構成、ストーリーが必須。入賞に至る作品がみられなかったのは残念だった。入賞しなかったが、思いがけないモチーフ、テーマに『きりぼしだいこんくん』(ゆるい絵柄が心地よい)、『もとは』(地域再生のドキュメンタリー風作品)などが心に残った。25回を迎えた絵本コンペは過去最大の応募数だった。これまで延べ5000作以上の審査にあたってきたことに我ながら驚き、深い感慨を覚える。そしてコンペ入賞者が絵本作家として大活躍しているさまは、絵本コンペの原動力ともなっている。 

 

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