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今年は応募総数223作品でした。受賞展は7月3日月曜日から7月22日まで3週間に渡り開催予定です。また会期中、応募作品を対象とした絵本講評のワークショップを開催します。
第24回ピンポイント絵本コンペ受賞展 2023年7月3日(月)~7月22日(土)
12:00~19:00 初日は14:00~19:00 休廊日:7/9,7/15,7/16,7/17 展覧会詳細はこちら
審査員という自分にはあまり似合わないことをさせていただくこととなり3年。お引き受けした理由、いま絵本を作りたい方たちは、どんなことを描きたいのかなあという好奇心、を充分満たしてもらえました。今年の作品も、次から次といろんな世界を楽しめました。大賞の『べこっここっこ』は、昨年も深く心に残る作品でしたので、再会できて嬉しかったです。惜しくも賞を逃した作品の中にも、現代をうつしだすものなのか、いわゆるレジ袋をうさぎに見立てたストーリーが2つあって(『ぼくのビニーちゃんどこいった?』『スーパーうさぎ』)、いずれもユニークな展開で印象的でした。また指を擬人化して、それぞれの存在意義を楽しく伝える『おててチームのこゆびちゃん』も元気いっぱい、最後のオチも楽しかったです。さまざま楽しい世界を描くストーリー絵本は起承転結が大事です。よく練られたストーリーは、きっと繰り返し読みたくなる絵本となるでしょう。この3年の有意義な時間に感謝します。(千葉美香)
223の作品が集まった今回は、読みやすくまとまりのよいものが多い印象を持った。まず入選の3作。『なわとびにんじゃ』は、忍法の術を子どもが親しみのもてる縄跳びにしたところに新味があった。『カラスはカラスだけではない』は、木の枝の重なりや川波のうねりなどを表現する、勢いのあるタッチが素晴らしい。『ちいさいねずみ』は、タイトルからはうかがえない存在が活躍する、奇妙で和やかな世界。太い輪郭線で描く今日的な絵も評価された。優秀賞の『チョコちゃん』は、小学生の授業、仕事調べをチョコレート菓子に置き換えた、かわいいお話。未来を選択する尊さを教えてくれる。同じく優秀賞の『くまのミシン』は、季節ごとの美しい瞬間を布のように切り取って、ミシンで服をつくるくまの母子を描いた作品。あでやかな切り絵が魅力的だった。『べこっここっこ』は、昨年の絵本コンペで最終審査に残った作品をブラッシュアップしたもの。作者の体験を元にした、子どもと牛のひと夏の物語で、血の通った表現をちりばめつつ、感傷的になりすぎない程あいで描くことに成功し、大賞に輝いた。(榎一憲)
「絵本のデザイナーの視点で参加して欲しい」とのギャラリーからのオファーで審査をさせていただくことになりました。それは「デザイナーの視点とは何か」と自分に問いかける作業でもありました。応募作は言わば「絵本の卵」の様なものです。「新鮮な卵はないか?」「デザインしたくなる作品か?」と考えながらの審査でした。絵本として、まずは絵に魅力が無いものは引っかかりません。テキストももちろん重要な要素ですが、書店で手にするのは「絵」が何かを語りかけて来るものでは無いでしょうか。自分自身は「上手いけど、どこかで見た事のある絵」より「何だこれ?」と思わせる絵に心惹かれます。「何だこれ?」はうまく説明できないけど、説明できないところが面白い。入賞の6作品は、上記の要素のどれかをクリアしたものではあります。私が入賞外で絵に魅力を感じた作者名を記します。(高橋雅之)
・macco ・鯉江かおる・とりまとりこ・菅いずみ・さとうのぶこ・木立和・こうじまいちお・にしかわなおこ・大本千夏・井上文・せきぐちはるか・ありとし・おなのりえ・牧山ひろし・マコイ・渡辺郁子・いひ・松本賀世子・吉田のばら・さくらいえいじ
最終選考熱戦の丁丁発止の最中、ひとりの審査員が「この作品には、ちいさな幸せを感じる」とつぶやきました。その一言で一同には笑みがこぼれ、ほっこりした気分に。幸せは、100人100通りかもしれません。しかし「ちいさな幸せを届ける」ことは、まさに絵本が果たせる宿願ではないでしょうか。入賞した作品には無論のこと、選外にもちいさな幸せをいくつか見つけました。また、今回より高橋雅之さんを審査員にお迎えしたことで、絵本のデザインという観点からも審査していただくことができました。構図や色彩、表紙の絵柄やタイトルの入れ方など、デザインの工夫で絵本の総合力が大きく変わります。まずは、表紙まわりから見直してみてください。なんといっても、第一番目の顔ですから。(西須由紀)