終了: 第23回ピンポイント絵本コンペ結果発表

23回ピンポイント絵本コンペ結果発表

審査員: 川端誠/千葉美香/榎一憲/西須由紀

今年の応募総数は231作品でした。審査では、審査員それぞれが数日間かけて全ての応募作品を読むところから始まります。最終選考では4名の審査員全員が集まり、3次選考通過の作品について話し合いを重ね、最終的に受賞6作品を決定します。白熱の議論の末に選ばれた6作品、是非ご高覧くださいませ。

受賞展は7月4日月曜日から3週間に渡り開催予定です。

第23回ピンポイント絵本コンペ受賞展 2022年7月4日(月)~7月23日(土)

12:00~19:00  初日は14:00~19:00 休廊日 10(日)、16(土)、17(日)、18(月) 展覧会詳細はこちら

最優秀賞 1名
『すえっこのふゆちゃん』あやかわ ちいこ
優秀賞 2名
『まよなかのおふろやさん』せきぐち ひろみ
『ペリカンしょくどうのポーラとカーラ』大村 えつこ
入選 3名
『ワニワニじまへようこそ』ハマダ ミワ
『それもまたよし』ひらめぐ商店
『さかなのせっこついん』押本達彦

第3次選考通過者までの発表はこちらから

 

審査員講評

(審査員、左から川端誠、千葉美香、西須由紀、榎一憲)

この絵本コンペは、商業出版をめざした作品を募集しています。ですから不特定多数の人に受け入れられるものでなければなりません。読者も好き嫌 いがありますから、どの人にも受け入れられる必要はありませんが、一番大切なのは読者に対するサービス精神です。足りないところは読者の解釈や 想像力にまかせてというのはダメなのです。どんな内容の作品でも、作者は冷静に読者の上をいっていなければいけません。冷静さとは客観的になる ということで、どれだけ自分が読者目線になれるかということです。最後の審査に残れなかった作品は、多かれ少なかれどこかで自分の世界に入って しまっている作品でした。いい例がタイトルです。下手なタイトルが多かったです。それと表紙の絵。表紙は開かなければ見られない絵本で、唯一読 者の目にとまる場所です。このタイトルと絵を一番大切に考えることこそ、読者に対するサービス精神(読者目線になる)の第一歩です。(川端誠 )

昨年は初めてのことでしたので、力作揃いのみなさんの作品を、初めて図書館に行った子どものように、おもしろく読ませていただきました。今年も 同じような気持ちがありましたが、このようにさまざまなことが起こっている世の中、どんな作品が生まれてくるのか、少し冷静な思いもありました。 が、その期待(?)に応える作品はほとんどありませんでした。考えると、それはいいことでもあったでしょう。子どもは昔からずっとおなじ。どん な時代にあっても、日々新しいことに出会い、好奇心強く、おもしろいことにいつも目をくりくりさせている、そしていろいろなことを経験してしま った大人にはない逞しさをもっているのではないでしょうか。絵本とはそんな世界であってほしいと、私は思っています。なので、お話の世界を楽し めるもの、子どもにとっての重要な悩みごとを素直に描いたもの、想像力をかき立てるようなお話などにグッときました。だいじなのは、何度でもそ の絵本の世界へ行きたくなることだと思います。(千葉美香)

『すえっこのふゆちゃん』姉妹の立場の違いという普遍性のある題材を、お下がりをきっかけに、愛らしく描いた物語。ドールハウスや流行遅れのグッズのキャラクターの思いがけない使い方、散りばめられた細部の楽しさ、視点が変化しても破綻のない絵などに評価が高まりました。『ペリカンしょくどうのポーラとカーラ』ペリカンのおばさん、ドードー鳥の娘をはじめ、キャラクターが魅力的。特に悪漢のマントヒヒに存在感があり、物語を引っ張 っていました。書きたいものを詰め込んだためか文章が長めで、幼年童話で読みたいという意見もありました。『まよなかのおふろやさん』は、今は懐かしい四角い湯船が主人公のお話。深い青で描かれた夜、温もりのある銭湯の風情に惹かれました。もう少し銭湯の実情に合っていれば、変化が出たように感じました。『それもまたよし』は、画面構成やデザインに水準の高さがありました。暮らしの中で思い通りにいかなくても、ポジティブ に受け入れる主人公の姿勢に好感が持てます。反面、タイトルのまま、おさまっている印象も受けました。『ワニワニじまへようこそ』は、馬、鹿、豚 と美味しそうな主人公たちが、ワニの島へ行くお話。旅へ行くまでの背景や行く末まで、細かい描写をコマ割り中心のページ構成で描いています。山場では見開きを使うなどすれば、メリハリが出たように思いました。『さかなのせっこついん』は、太い線で描いた生きものたちに、モザイク様で彩色した絵が個性的。生物の性質を物語に反映しようとする努力やホオジロザメの表情が評価されました。たくさんの絵本に接し、新しい表現、物語を 作りあげることは至難の業と再認識しながらも、まだまだ未開の地はあると気づく機会でした。(榎一憲)

毎回話題にでることですが、魅力的なテーマ、ストーリーとうまい絵が組み合わされば良い作品が生まれる可能性大と。散歩、誕生日、くも、雨、ホッ トケーキ、カレーライスなど身近なテーマは多く見受けられますが、これらは既存の絵本に名作がごまんとあるのですから、それを打ち抜く斬新さや 個性を見たいところです。また今回は、画面をコマ割り展開する構成が目立ちました。ストーリーボードの段階で 15 見開きにどんな絵がふさわしいのかしっかりと見極めた作品には説得力がありました。昨秋より今夏にかけ、過去の受賞作が続々と出版化されます。応募作をさらにブラッシュアッ プし、素晴らしい絵本となりました。どうぞご高覧ください。創作のヒントが隠れているかもしれません。( 西須由紀 )  

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