ワークショップリポート 2017  絵本レクチャー&講評
レポート:渡邊淳子さん(第18回絵本コンペ参加者)

A-1 絵本講評 講師:若月眞知子 氏

数時間で予約が埋まったという若月さんの講評会。
まずはじめに、"本は人のようだ"というお話からスタートしました。
背・小口など人の名前で表され、湿度によって波打ってしまう生き物のような本。そこには「背骨が必要!」というお話でした。
一人一人、読み聞かせの後講評をしていただくのですが、
「この本の背骨(=本のコンセプト)は何ですか?」と必ず質問されていました。

一人ずつ丁寧な講評で、休憩中もたくさんお話をして下さいました。

最後は、『アームストロング』の作者トーベン・クールマンさんが、以前講演会の為だけに描き下ろしたという貴重な絵をスライドで見せていただき、"アングルの違いによる効果"をご説明下さいました。
背景を足すのか、視点は手前か向かいのお店か、後ろ姿で手元を隠すか、それだけで意味が全くかわることがわかり、言葉がなくても視点次第でこんなにも物語ることが出来るのかと驚きました。

全体を通して印象的だったのは、
「一回版を作ったら作家と出版社は結婚したようなもの」
という若月さんの言葉のように、編集者は一生懸命版を作っているということ。
その熱に負けないぐらい、もっともっと熱を込めて取り組まないと!と身の引き締まる思いでした。

wakatukiHP.jpg「絵本の背骨は。。。」

A-2 絵本講評 講師:堀内日出登巳 氏

堀内さんの講評会も、参加者が読み聞かせをし、その作品を講評するという形で行われました。

具体的な指摘がとてもわかりやすく、その中で度々おっしゃっていたことは、
「出したものをいかに使っていくか」、「たった一つのことで15場面完遂する」ということでした。

前者は、シーンにしてもキャラクターにしても、それを選んだことの説得力が弱いというのが共通していました。
例えば動物を選んだのなら、鼻が長い、耳が長いなどそんなものではなく、もっと特徴を落とし込まなければその動物を使う意味がない、ということ。

後者は、一つのテーマだけでお話を作ることが大切で、足りないと思って"つい"入れてしまったものは余計なものだということでした。

講評会後半は、その日発売したばかりの『こんやはてまきずし』のラストシーンを、参加者それぞれが作るワークショップを行いました。
皆さんいろんな視点を持っておられ、堀内さんからは、センチメンタルになってしまうので却下、面白いアイデアだが実際は使われないだろうなど"出版するには"の部分のお話を伺え、勉強になりました。
実際の本では、夜のシーンを強調させる意図も含まれたラストになっていました。

horiuchiHP.jpg堀内さんの読み聞かせ

A-3 絵本講評 講師:いとうひろし 氏

3日目のいとうさんの講評会では、編集者の方とはまた違った作家目線でのお話を伺え、共通する点、真逆の意見など興味深かったです。

参加者全員の作品を1冊ずつ講評し、絵はイメージを限定してしまうので描くのが怖いというご自身のお話も交えながら、また、途中絵や図を書いて説明して下さったり、とても熱のこもった講評会でした。

私が特に心に残ったことは、子どもにわからないものを避けるのではなく、
"今の自分が感じたものを、そのまま子どもと共有するにはどう伝えたらいいのか"という考え方でした。
"悲しい"という感情も、ただわかりやすくありふれた言葉にするのではなく、この本の中でしか通用しない"悲しい"にしないといけないとおっしゃっていました。

そして、「かく時に慌てないで!」「しっかり考えて!」と一貫しておっしゃっており、
"自分の世界"と"作品として出来たもの"を客観視すること、本当に描きたかったものは何か、自分が絵本を作る意味など、とにかくじっくり考えてほしいと。
さらには、絵本が生まれた頃からの出版の歴史を勉強し、その流れの系統を自分はどっちに発展させていきたいのかを考えてほしいとのお話に衝撃を受けました。

いろんな方向へ話を広げながら、そして声をからしながらも、なんと1時間以上も延長してお話してくださいました。

itoHP.jpg絵本づくりを慌てないで